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薬剤師の定年後・再雇用の時給相場は?60歳以降の年収と賢い働き方

定年後の薬剤師の働き方を解説したインフォグラフィック。再雇用時のリアルな時給相場、調剤薬局とドラッグストアの待遇比較、年収ダウンを防ぐための資格や制度活用のコツなどを図解しています。

「定年後も今の薬局で働き続けたいけれど、給料が半分になるって本当?」
「60歳を過ぎてから、新しい職場なんて見つかるのだろうか……」

長年、地域の医療を支えてきた薬剤師の皆さんにとって、定年後のキャリアは切実な問題ですよね。住宅ローンの残債や老後資金の不安がある中で、年収が激減するという現実は、想像以上に大きなプレッシャーとしてのしかかってきます。

私自身も調剤薬局の現場に長く身を置いてきましたが、定年を迎えた先輩方が「時給2,000円」という提示額に愕然とし、プライドと生活維持の間で葛藤する姿を何度も見てきました。しかし、一方で準備をしていた人は、60代以降も「必要とされる薬剤師」として、適正な対価を得ながら生き生きと働いています。

この記事では、2026年時点での最新データに基づき、薬剤師の定年後・再雇用のリアルな時給相場から、年収ダウンを最小限に抑えるための具体的な戦略までを包み隠さずお伝えします。漠然とした不安を解消し、あなたらしい「第二の薬剤師人生」を踏み出すための一歩を一緒に踏み出しましょう。

筆者
定年後の現実は厳しい側面もありますが、知識と経験は決して裏切りません。制度を正しく理解して準備すれば、納得のいく働き方は必ず見つかりますよ。

この記事で分かること

  • 定年後の時給相場は2,000円〜2,500円が現実的なライン
  • 「再雇用制度」と「勤務延長制度」の決定的な待遇差
  • 65歳・70歳の壁を乗り越えるための具体的なスキルと資格
  • 在職老齢年金で損をしないための賢いシフト調整術
  • 定年後の年収激減を防ぐための転職・交渉のコツ
CONTENT

薬剤師の定年後・再雇用のリアルな時給相場と年収推移【現実】

まずは、目を背けたくなるかもしれない「お金の現実」から直視していきましょう。多くの薬剤師が「国家資格があるから大丈夫」と楽観視していますが、60歳の定年を境に雇用条件は劇的に変化します。2026年現在の市場データと現場の実態を踏まえ、再雇用時に提示される具体的な時給額と、年収がどれくらい下がるのかを詳しく解説します。

定年退職後の時給は2,000円〜2,500円が現実ライン

結論から申し上げますと、一般的な調剤薬局で定年後に再雇用される場合の時給相場は、2,000円〜2,500円がボリュームゾーンです。現役時代に管理薬剤師やエリアマネージャーとして活躍し、時給換算で3,000円〜4,000円相当の働きをしていた方にとっては、衝撃的な数字かもしれません。しかし、これがシニア雇用の「市場価格」なのです。

特に都市部の人気エリアでは、若手薬剤師の採用がある程度充足している場合、時給2,000円ちょうど、あるいはそれ以下での提示も珍しくありません。企業側としては「これまでの功労者」としての配慮はあるものの、経営的な視点で見れば「コストを抑えられる労働力」としての側面も強くなります。一方で、地方の人手不足エリアでは2,500円〜3,000円と比較的高めの設定がなされることもあり、勤務地による格差が広がっています。

また、ドラッグストア(OTC兼務)の場合は少し事情が異なります。土日祝日や夜間の勤務が可能であれば、時給2,200円〜2,800円程度と、調剤専門薬局よりも高水準になる傾向があります。ただし、これには品出しやレジ打ちといった体力業務が含まれることが多く、「薬剤師業務だけに専念したい」という方にはハードルが高い場合もあります。

重要なのは、求人票に書かれている「最大時給」を鵜呑みにしないことです。「時給3,000円可」とあっても、それは管理薬剤師候補やへき地勤務などの特殊条件であることがほとんど。一般的なスタッフ業務であれば、時給2,000円強が妥当なラインだと認識しておくことで、実際の提示額を見た時のショックを和らげることができます。

求人情報の見方

求人サイトで見かける「高時給シニア求人」には注意が必要です。条件が良い案件には、一人薬剤師で休憩が取れない、通勤が困難な店舗である、などの裏事情があるケースも。金額だけで飛びつかず、業務内容を精査しましょう。

年収は現役時代の50〜60%までダウン!50代からの具体的な下落シミュレーション

時給以上に深刻なのが、「年収」ベースでの大幅なダウンです。多くの企業では、定年後の再雇用契約において「賞与(ボーナス)」が支給されない、もしくは寸志程度(数万円)に減額されることが一般的です。さらに、役職手当や家族手当などの諸手当もカットされるため、手取り額は現役時代の50%〜60%程度まで落ち込むケースが大半です。

例えば、50代で年収700万円(月給45万円+賞与160万円)を得ていた薬剤師が、定年後に時給2,200円のフルタイムパート(週40時間)で再雇用された場合をシミュレーションしてみましょう。月収は約35万円(2,200円×160時間)となり、賞与がなければ年収は約420万円になります。これだけで約280万円の減収です。

さらに、体力的な理由や「年金をもらいながら働きたい」という希望で週3〜4日の勤務に短縮した場合はどうなるでしょうか。週24時間勤務(週3日)だと、月収は約21万円、年収は約250万円となります。現役時代の3分の1近い水準です。この現実を前に、「住宅ローンの返済計画が狂った」「生活レベルを下げられない」と悩む方が後を絶ちません。

このデータについては、生命保険文化センターの定年後の生活設計に関するデータなども参考にすると、一般的な会社員の平均と比較しても薬剤師の減収幅が大きいことが理解できるはずです。まずはこの「厳しい現実」を数字として把握し、50代のうちから貯蓄や支出の見直しを進めることが不可欠です。

ドラッグストアvs調剤薬局vs病院!業態別の給与格差と仕事内容

定年後の働き場所として、どの業態を選ぶかによっても時給と待遇は大きく異なります。「どこで働いても同じだろう」と考えていると、数百円の時給差が年間の収入で数十万円の差になって返ってきます。ここでは主要な3つの業態について、定年後の待遇を比較してみましょう。

業態 時給相場(目安) 定年後の特徴 メリット・デメリット
調剤薬局 2,000円〜2,500円 再雇用の王道。
経験が活かしやすい。
メリット: 監査・投薬など慣れた業務が中心。
デメリット: 店舗によって設備の老朽化や人間関係が固定化しやすい。
ドラッグストア 2,200円〜2,800円 人手不足のため高待遇。
OTC知識も必要。
メリット: 時給が高く、求人数も多い。
デメリット: 立ち仕事が多く、レジ・品出し等の体力負担が大きい。
病院(療養型等) 1,500円〜2,000円 当直なしパートが主。
給与水準は低め。
メリット: 臨床知識を活かせる。落ち着いた環境の場合も。
デメリット: 給与が最も低い傾向。急性期病院でのシニア採用は狭き門。
調剤併設ドラッグ 2,100円〜2,600円 調剤メインだが
DSの規定が適用。
メリット: 調剤薬局より福利厚生が良い場合がある。
デメリット: 閉局時間が遅く、遅番シフトを求められることがある。

表の通り、収入面を最優先するならドラッグストアに軍配が上がります。特に「土日だけでも働ける」という柔軟性があれば、60代でも好条件で迎え入れられるでしょう。一方で、体力に自信がなく、座り仕事や落ち着いたペースでの業務を希望する場合は、時給が多少下がっても中小規模の調剤薬局や、療養型病院のパートを探すのが賢明です。

また、「調剤併設ドラッグストア」は狙い目の一つです。調剤業務がメインでありながら、母体が大手ドラッグストアであるため、コンプライアンスや福利厚生(社割など)がしっかりしているケースが多いです。自分の体力と相談しながら、「時給」と「働きやすさ」のバランスが取れる業態を見極めることが重要です。

ただし、病院に関しては公的な給与規定に縛られることが多く、どんなに経験があってもパートの時給上限が決まっていることが一般的です。「やりがい」重視なら選択肢に入りますが、「稼ぐ」ことを目的とするなら、民間企業である薬局やドラッグストアを中心に探すことをお勧めします。

定年後も働き続けるための「再雇用」と「転職」の分かれ道

60歳を迎えた時、あなたには大きく分けて2つの道があります。一つは今の会社に残る「再雇用」、もう一つは新天地を求める「転職」です。どちらを選ぶかによって、その後の5年間、さらには70歳までの働き方が決まります。法制度の違いや「年齢の壁」について、正確な知識を持っておくことが身を守ることにつながります。

「勤務延長制度」と「再雇用制度」は天と地!契約の違いを正しく理解する

多くの薬剤師の方が混同しているのが、「勤務延長制度」と「再雇用制度」の違いです。言葉は似ていますが、その待遇には天と地ほどの差があります。この違いを知らずに会社側の提案を鵜呑みにしてしまうと、本来得られたはずの利益を失うことになりかねません。

項目 勤務延長制度(レアケース) 再雇用制度(一般的)
雇用の切れ目 退職せず、そのまま継続 一旦「定年退職」し、再契約
給与水準 現役時代と同等を維持
(役職定年等の規定による)
大幅にダウン
(パート・嘱託社員並み)
退職金 勤務延長終了時に支給 60歳の定年時に支給
仕事内容 これまでと同じ責任・業務 責任の軽い業務へ変更されることが多い
適用される人 役員や代わりのいない専門職 希望者全員(原則)

表で示した通り、勤務延長制度は「正社員のまま」雇用が続く夢のような制度ですが、適用されるのはごく一部の幹部や、極めて高度な専門性を持つ薬剤師に限られます。多くの調剤薬局で採用されているのは、下の再雇用制度です。一度退職扱いとなるため、正社員時代の積み上げがリセットされ、会社側が提示する新しい(低い)条件で契約を結び直すことになります。

この再雇用時の条件提示において、「提示額が不当に低すぎないか」「他社と比較して妥当か」を判断する物差しを持つことが重要です。会社側も「嫌なら辞めてもいい」というスタンスで強気な条件を出してくることがありますが、ここで厚生労働省の高年齢労働者の雇用形態と賃金に関する統計データなどの客観的な情報を知っていれば、交渉の余地があるかもしれません。

もし、あなたの会社に「勤務延長制度」の規定があるなら、自分がその対象になり得るのか、どのような条件(資格や実績)が必要なのかを就業規則で確認しておく価値は十分にあります。

65歳の壁と70歳努力義務の落とし穴!いつまで正社員でいられるか

「人生100年時代、70歳まで働ける」というニュースを耳にしますが、現場の実態はそれほど甘くありません。法律上、企業には「65歳までの雇用確保義務」がありますが、「70歳までの就業確保」はあくまで努力義務に過ぎないからです。この「努力義務」という言葉が、多くの高齢薬剤師を苦しめる落とし穴になっています。

具体的には、60歳で再雇用された後、65歳までは法律に守られて雇用が継続されます(本人が希望し、就業規則の解雇事由に該当しない限り)。しかし、65歳の誕生日を迎えた途端、多くの企業で「契約期間満了」として雇い止めが発生します。企業側には70歳まで雇う法的強制力がないため、体力や能力に衰えが見えるシニア薬剤師を積極的に残そうとはしないのが現実です。

実際に、厚生労働省による高年齢者雇用安定法の解説を見ても、70歳までの措置は企業の自主性に委ねられています。大手チェーン薬局ほどこの線引きはシビアで、システム的に65歳で契約終了となるケースが目立ちます。逆に、中小規模の個人薬局の方が、人手不足の裏返しとして「元気なうちはいつまでもいてくれ」と70代でも雇用してくれる柔軟性がある場合が多いです。

したがって、「65歳の壁」にぶつかってから慌てないためには、60代前半のうちに「70歳以降も雇用実績がある会社」へ移っておくか、あるいは今の職場で「代わりの効かない人材(例えば特定の在宅患者と深い信頼関係があるなど)」としてのポジションを確立しておく必要があります。「国がなんとかしてくれる」という期待は捨て、自衛策を講じましょう。

今の職場で再雇用されるメリットとデメリットを天秤にかける

結局のところ、今の会社に残るべきか、外に出るべきか。この決断をする際には、給与だけでなく「精神的なコスト」も含めて天秤にかける必要があります。慣れ親しんだ環境には安心感がありますが、それが逆にストレスになることもあるからです。

今の職場で再雇用される最大のメリットは、人間関係や業務フローを一から覚える必要がないことです。薬歴のシステム、在庫の場所、疑義照会のルールなど、長年染み付いた知識そのままに働けるのは、加齢に伴う記憶力低下が気になる世代にとって大きな強みです。通勤経路が変わらないことも、生活リズムを維持する上で有利に働きます。

一方でデメリットとしては、「過去の役職とのギャップ」によるプライドの傷つきが挙げられます。昨日まで部下だった人間に指示をされ、敬語を使われる居心地の悪さ。また、「あの人は元部長だから」という周囲の気遣いが、逆に孤立感を生むこともあります。さらに、給与が現役時代の半分以下になっているのに、周囲からは現役時代と同じレベルの成果や相談役としての役割を期待され、「割に合わない」と感じるケースも多々あります。

筆者
「気心が知れているから」と安易に残ると、かえって惨めな思いをするという相談もよく受けます。給与ダウンを受け入れてでも今の仲間に囲まれていたいか、一度自問自答してみてください。

もし、人間関係が良好で「給料が下がっても、このメンバーと働きたい」と思えるなら再雇用は最良の選択です。しかし、現状に不満があり「給料も下がるのに我慢しなきゃいけないのか」と感じるなら、心機一転、あなたの過去を知らない新しい職場で「一人のベテラン薬剤師」として評価される道を選ぶほうが、精神衛生上良い結果を生むことが多いのです。

収入激減を防ぐ!50代から始める「定年貧乏回避」の戦略的準備

薬剤師が定年後に関わる「勤務延長制度」と「再雇用制度」の違いを一覧表で解説。雇用の継続性、給与水準、退職金、業務内容の観点から、両制度の待遇差を分かりやすく比較しています。

定年後の収入ダウンは避けられない運命だと思っていませんか? 確かに相場は下がりますが、個人の努力次第でその「下げ幅」を食い止めることは可能です。そのためには、定年になってから動くのではなく、50代のうちから「市場価値」を高める準備をしておくことが鍵となります。ここでは、具体的に収入防衛につながるアクションプランを紹介します。

認定薬剤師資格は「時給+数百円」の武器になる!交渉材料としての価値

「今さら資格なんて……」と思うかもしれませんが、定年後の再就職市場において「研修認定薬剤師」などの資格は、若手以上に強力な武器になります。なぜなら、薬局経営において「かかりつけ薬剤師」の算定要件を満たす人材は、喉から手が出るほど欲しい「収益源」だからです。

再雇用や転職の面接時に、ただ「経験があります」と言うのと、「認定薬剤師資格があり、かかりつけの実績も〇〇件あります」と提示するのでは、相手の見る目が変わります。具体的には、この資格の有無で時給にして100円〜300円、月収換算で数万円の差がつくケースが実際にあります。これは年間数十万円の収入差に直結します。

また、「在宅医療」の経験も非常に高く評価されます。高齢化社会において在宅業務は必須ですが、若手薬剤師の中には敬遠する人も少なくありません。「運転ができて、医師やケアマネとも円滑にコミュニケーションが取れるベテラン」は、時給交渉において最強のカードになり得ます。50代のうちにe-ラーニングで単位を取得し、在宅業務にも積極的に手を挙げて実績を作っておくことが、将来の自分を助けることになるのです。

管理職経験は邪魔になる?「現場力」を取り戻すためのマインドセット

管理職経験を持つ50代のベテラン薬剤師が、過去のプライドを捨て新しい職場で若手と協力する様子。転職を成功させるために重要な「現場力」と、柔軟なマインドセットの大切さを表現した画像。

皮肉なことに、50代で立派な肩書き(エリアマネージャーや薬局長)を持っていた人ほど、再雇用の現場では「使いにくい」と敬遠されるリスクがあります。現場の採用担当者が恐れるのは、「口は出すが手は動かさない」「プライドが高くて扱いにくい」シニア薬剤師です。管理業務に追われて調剤や監査の現場から離れていた期間が長い場合、この懸念はより強まります。

収入を確保するために必要なのは、過去の栄光ではなく「今の現場力」です。50代後半になったら、あえて管理業務の比重を減らし、若手に混ざってピッキングや投薬の数をこなす時間を増やしましょう。最新の薬の知識、電子薬歴の入力スピード、疑義照会の勘所。これらを錆びつかせないように意識的にメンテナンスすることが大切です。

「私は元管理職だから」という鎧を脱ぎ捨て、「一兵卒として何でもやります」という姿勢を見せられる人は、どの職場に行っても重宝されます。このマインドセットの切り替えこそが、実は資格以上に重要な「雇用され続けるためのスキル」なのです。

「在職老齢年金」で損をしない!働き損を防ぐ最適なシフト調整術

60代以降の働き方で最も注意しなければならないのが、「働けば働くほど年金が減らされる」という在職老齢年金の仕組みです。薬剤師は時給が高いため、フルタイムに近い働き方をすると、賃金と年金の合計額が基準を超えてしまい、年金の一部または全額が支給停止になるリスクが非常に高い職種です。

具体的には、基本月額(年金)と総報酬月額相当額(給与+賞与の1/12)の合計が50万円(2026年時点の基準額を確認してください)を超えると、超過分の半額が年金からカットされます。「頑張って働いたのに、手取りがほとんど増えていない」という事態を避けるためには、あえて勤務時間や日数を調整し、この基準額ギリギリに収めるのが賢い戦略となります。

この仕組みについては、日本年金機構の「働きながら年金を受給する方へ」のページで詳細を確認し、自分の年金受給見込み額と照らし合わせて計算しておく必要があります。

高年齢雇用継続給付も活用しよう

60歳時点の賃金から75%未満に下がった場合、雇用保険から「高年齢雇用継続給付金」が支給される制度もあります。これにより、下がった給与の最大15%相当が補填されます。手続きについてはハローワークの案内を確認し、会社に申請を依頼しましょう。

60歳以降の薬剤師が直面する「人間関係」と「体力」の壁

定年後の悩みは、決してお金のことだけではありません。実際に再雇用で働いている先輩たちが口を揃えて言うのは、「人間関係の居心地の悪さ」と「体力の衰え」に対する嘆きです。長く働き続けるためには、これらの壁をどう乗り越えるか、あるいはどう回避するかが重要になってきます。

元部下が上司になるストレス!「老害」と呼ばれないための振る舞い方

再雇用されたその日から、かつて自分が指導していた部下が「上司(薬局長)」になります。頭では分かっていても、感情がついていかないのが人間です。上司からの指示に対して「昔はそのやり方じゃなかった」「私の経験では…」と反論してしまうと、一瞬で「老害」認定され、職場での居場所を失います。

うまく適応している人は、驚くほど「聞き上手」です。自分の経験は聞かれた時だけ控えめに伝え、基本的には今の責任者である年下のボスのやり方を尊重する。「〇〇さんのやり方、勉強になるよ」と年下を立てるくらいの余裕を持つことが、円滑な人間関係を築くコツです。過去の自分ではなく、今のチームメンバーとしての役割に徹することが、自分自身の精神的な平穏にもつながります。

電子薬歴や調剤機器への適応!スピードと正確性を維持するコツ

現代の調剤薬局は、IT化が急速に進んでいます。電子薬歴のクラウド化、自動分包機、ピッキング監査システムなど、新しい機器やソフトが次々と導入されます。これらに対して「昔のアナログなやり方の方が早かった」と拒否反応を示すのは致命的です。

「目が見えにくくて画面操作が遅れる」「タッチパネルの反応が悪い」といった身体的なハンデはどうしても出てきます。しかし、それを「機械のせい」にするのではなく、素直に「操作を教えてほしい」と若手に頼めるかどうかが分かれ道です。若手スタッフも、一生懸命学ぼうとする姿勢のあるベテランには親切に教えてくれるものです。デジタルのスピードには勝てなくても、入力内容の「正確性」や、患者さんとの会話から副作用の兆候を読み取る「観察眼」など、ベテランならではの強みを発揮できる場面は必ずあります。

立ち仕事の限界に挑む!健康管理と無理のない職場選びのポイント

立ち仕事で腰に手を当て、辛そうな表情を浮かべる薬剤師の女性。身体的な負担を減らし健康的に働くための職場選びの重要性や、無理のない働き方への転職を考えている様子を表現したイラストです。

60代になると、1日8時間の立ち仕事は想像以上に身体に堪えます。腰痛、膝の痛み、夕方の足のむくみ。これらが慢性化すると、仕事そのものが苦痛になり、早期退職につながってしまいます。健康こそが最大の資本です。

無理なく働くためには、職場選びの段階で「設備環境」をチェックすることが重要です。例えば、監査台に椅子が用意されているか、休憩室はしっかり休める環境か、階段の上り下りが頻繁にないか(エレベーターの有無)などです。また、長時間勤務を避けて「午前中のみ」「週3日」といったシフトを選ぶことも、長く細く働き続けるための賢い選択です。「まだ若いもんには負けん」と無理をせず、自分の身体の変化を素直に受け入れ、いたわりながら働くスタイルへシフトチェンジしていきましょう。

筆者
私の知人は、立ち仕事が辛くなったのを機に、座り業務が多い「透析クリニック」の調剤室へ転職しました。自分に合った環境に変えるだけで、驚くほど楽に働けるようになりますよ。

定年後も高収入・高待遇を狙うなら検討すべき「裏ワザ」的選択肢

ここまでは「下がることを前提」とした話をしてきましたが、実は定年後でも現役時代並み、あるいはそれ以上の高収入を得ている薬剤師も存在します。彼らは皆と同じ土俵で戦うのではなく、少し視点を変えた「ブルーオーシャン」を選んでいます。もしあなたが、環境を変えることに抵抗がないのであれば、次のような選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。

地方・へき地薬局への「出稼ぎ」なら年収600万円維持も夢ではない

都市部では買い手市場でも、地方に行けば状況は一変します。特に北海道や東北、山間部や離島などのエリアでは、薬剤師不足が深刻であり、60代・70代であっても「来てくれるだけでありがたい」と熱烈に歓迎されます。こうした地域では、定年後でも年収600万円以上、場合によっては700万円〜800万円という破格の条件が提示されることも珍しくありません。

項目 都市部の再雇用 地方・へき地勤務
年収目安 350万〜450万円 600万〜800万円
住居費 自己負担 社宅無料・家賃補助9割など
通勤 満員電車や渋滞 職住近接(徒歩・車ですぐ)
定年年齢 65歳雇い止めが多い 70歳以上も現役が多い

表のように、給与が高いだけでなく、住居費(家賃)が会社負担になるケースが多いため、可処分所得(手元に残るお金)は劇的に増えます。「老後の資金を最後の5年間で一気に貯める」という目的で、期間限定の「出稼ぎ」として単身赴任する方もいます。自然豊かな環境で、患者さんとゆっくり向き合う地域医療に従事することは、都会の喧騒に疲れた薬剤師にとって、意外なほど充実したセカンドライフになるかもしれません。

派遣薬剤師という選択!自由度と高時給を両立させる働き方

正社員や直接雇用のパートにこだわらず、「派遣薬剤師」として働くのも一つの手です。派遣の時給相場は2,500円〜3,500円と高く、短期間(3ヶ月〜半年など)の契約更新で働くことができます。「半年働いて半年休む」「旅行に行きたいから来月は休む」といった自由な働き方が可能です。

ただし、派遣法により同じ職場で3年以上は働けないことや、60歳以上の派遣登録に対する各派遣会社の規定など、注意すべき点もあります。また、即戦力が求められるため、一定以上のスキルは必須です。それでも、組織のしがらみから解放され、ドライに「労働力を提供して対価を得る」という働き方は、精神的な負担が少なく、シニア層にも人気が高まっています。

60代歓迎の求人を見抜く!転職サイト活用とエージェント交渉術

最後に、定年後の職探しにおける最重要ツールが「転職エージェント」です。ハローワークや求人誌にも情報はありますが、条件の良い求人や「実は70歳まで働ける」といった内部情報は、エージェントが保有する「非公開求人」に含まれていることが多いのです。

60代の利用で重要なのは、「シニア層に強い」または「地域密着型」のエージェントを選ぶことです。大手すぎるサービスでは、年齢だけで機械的にフィルタリングされてしまうこともあります。担当のエージェントには、「定年後の時給相場を知りたい」「65歳以降も長く働ける職場を優先したい」と率直に伝えましょう。

また、交渉のプロであるエージェントを介することで、「認定薬剤師を持っているので時給を100円上げてほしい」「週30時間勤務にして社会保険に入りたい」といった、自分では言いにくい条件交渉を代行してもらえます。退職の半年前から相談を始め、自分の市場価値を客観的に把握しておくことが、定年後の「働き場所難民」になることを防ぐ防波堤となります。

Q. 65歳で再雇用された場合、給料はいくらですか?

A. フルタイム勤務の場合、年収350万〜450万円(時給2,000円〜2,200円)程度が一般的です。現役時代と比較して5〜6割程度に下がることが多いですが、同一労働同一賃金の観点から、業務内容が変わらないのに不当に下げることは認められていません。

Q. 定年後にドラッグストアへの転職は未経験でも可能ですか?

A. 可能です。特に調剤併設店では調剤経験があれば歓迎されます。ただし、OTCのみの店舗や深夜勤務がある店舗では、レジ打ちや品出し等の体力業務が必須となるため、ご自身の体力と相談して応募することをお勧めします。

Q. 60歳で定年退職した後、失業保険はもらえますか?

A. もらえます。65歳未満で退職した場合は通常の「基本手当」、65歳以上で退職した場合は「高年齢求職者給付金(一時金)」となります。求職の申し込みをし、働く意思と能力があることが前提です。

Q. パート勤務で社会保険には加入できますか?

A. はい、週20時間以上の勤務など一定の要件を満たせば加入できます。配偶者の扶養に入るか、自分で社会保険に入って将来の厚生年金を増やすか、どちらが得かをシミュレーションしてシフトを決めることが重要です。

Q. 認定薬剤師の資格は定年後の時給アップに影響しますか?

A. 大きく影響します。「かかりつけ薬剤師」の算定要件となる認定薬剤師資格は薬局の収益に直結するため、資格があるだけで時給が100円〜300円程度優遇されるケースが多く、採用率も格段に上がります。

Q. 定年退職の何ヶ月前から転職活動を始めるべきですか?

A. 半年前(6ヶ月前)から情報収集を始めるのがベストです。今の会社の就業規則を確認し、再雇用の条件提示を受ける時期などを考慮しつつ、余裕を持って他社の求人と比較検討する時間が必要です。

定年後の薬剤師キャリアで後悔しないために今すぐすべきこと

定年後のキャリアプランを考えるシニア薬剤師。後悔しない働き方を選ぶために、転職や再雇用など、今後の働き方について情報収集している様子。

定年後も自分らしく働き続けるためには、会社任せにするのではなく、自分で情報を掴みに行動することが不可欠です。最後に、今日からできることをまとめました。

  • 今の会社の就業規則(定年年齢、再雇用上限年齢、退職金規定)を熟読する
  • 「ねんきん定期便」を確認し、65歳からの受給額を把握する
  • 認定薬剤師の単位取得や更新を怠らない(資格は一生の資産)
  • 電子薬歴や新しい調剤機器の操作を、今のうちに若手に教わっておく
  • 定年後の生活費(最低いくらあれば暮らせるか)を洗い出す
  • 転職サイトに登録し、自分のエリアの「シニア歓迎求人」の時給相場をチェックする
  • ドラッグストアや他業態の求人も見て、視野を広げておく
  • 健康診断の結果を直視し、体力作りや目のケアを始める
  • 「管理職としての自分」ではなく「現場薬剤師としての自分」にマインドを切り替える
  • 家族(配偶者)と定年後の働き方や収入について話し合っておく
  • 地方勤務や派遣など、多様な選択肢があることを知っておく
  • 信頼できる転職エージェントを見つけ、市場価値診断を受けてみる
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