「調剤室に入ると、動悸が止まらない」
「1mgの計量ミスも許されないプレッシャーに、毎日押しつぶされそうだ」
「親の期待に応えて薬剤師になったけれど、自分の人生を生きている気がしない」
もしあなたがこのような感覚を抱いているなら、それは単なる「仕事の疲れ」や「性格の問題」ではないかもしれません。実は、私たち薬剤師の中には、幼少期の家庭環境に起因する「アダルトチルドレン(AC)」の生きづらさを抱えながら、医療現場という過酷な環境で戦い続けている人が少なくないのです。
私自身も調剤薬局で長年勤務してきましたが、完璧主義ゆえに監査で何度も袋を確認し直したり、患者さんの何気ない一言で「全人格を否定された」ように感じて落ち込んだりする同僚を数多く見てきました。そして私自身も、親の顔色を伺うように上司の顔色を伺い、断れない性格から残業を引き受けては体調を崩すというループを繰り返した経験があります。
この記事では、アダルトチルドレン特有の心理メカニズムが、薬剤師の業務や職場環境とどのように関わっているのかを深く掘り下げます。そして、精神論ではなく「環境を変えること(環境療法)」で、その生きづらさをどう手放していくか、具体的なキャリア戦略を提案します。
あなたは悪くありません。ただ、今の環境が、あなたの「心の古傷」に合っていないだけかもしれないのです。少し肩の力を抜いて、一緒にこれからの働き方を考えてみませんか。
「資格があるから逃げられない」ではなく、「資格があるからこそ、環境を選べる」のです。自分を守るための選択肢を一緒に探していきましょう。
この記事で分かること
- 薬剤師にAC傾向を持つ人が多い背景と「教育虐待」の関係
- あなたの生きづらさの正体(6つの役割タイプ診断)
- AC特有の「調剤過誤恐怖」や「人間関係の悩み」のメカニズム
- タイプ別に厳選した「心が楽になる働き方」と職場選びの基準
- 親の呪縛から解放され、自分らしく働くための転職戦略
アダルトチルドレン(AC)と薬剤師の生きづらさ:その深い関係性
薬剤師として働いていて、「なぜ自分だけこんなに苦しいのだろう」と感じることはありませんか? 周囲は適当に流しているクレームでも、自分だけは深く傷つき、夜も眠れなくなる。あるいは、ミスをするのが怖くて、確認作業に人の倍以上の時間がかかってしまう。これらは個人の能力不足ではなく、幼少期から培われた思考の癖、すなわちアダルトチルドレン(AC)の特性が、薬剤師という職業の特殊性と複雑に絡み合っている可能性があります。
アダルトチルドレンとは、機能不全家族(家庭内で安心・安全が確保されなかった環境)で育ち、成人してからもそのトラウマや思考パターンに縛られ、生きづらさを感じている人々を指す概念です。医学的な診断名ではありませんが、刈谷病院の家族教室などの精神科医療の現場でも、家族機能の問題として広く認知され、ケアの対象となっています。
なぜ薬剤師にACが多いのか?「教育虐待」と「いい子」の呪縛
薬剤師業界を見渡すと、真面目で責任感が強く、しかしどこか自己肯定感が低い人が多いことに気づきます。これには、「薬剤師になるまでの過程」が大きく関係していると考えられます。多くのケースで、親(特に母親や医療従事者の家系)からの強い期待やコントロール、いわゆる「教育虐待」に近い環境下で育った背景が見え隠れします。
例えば、「薬剤師になれば将来安泰だ」「女の子には手に職をつけてほしい」という親の不安や願望を、幼い頃から刷り込まれてきたケースです。子供は親に愛されたい一心で、自分の本当にやりたいこと(芸術や文学など)を封印し、理系科目に取り組み、薬学部に進学します。結果として国家資格は手に入れますが、その動機は「親を安心させるため」「怒られないため」であり、自分自身の情熱ではありません。この「仮面のキャリア」が、社会人になってからの虚無感や、「自分の人生を生きていない」という感覚の根源となっています。
また、このような家庭環境では「条件付きの愛」しか与えられなかったことが多く、「テストでいい点を取らないと価値がない」「期待に応えないと見捨てられる」という恐怖が刷り込まれています。これが薬剤師としての業務においても、「完璧に仕事をしないと居場所がない」「ミスをしたら終わりだ」という極端な思考(全か無か思考)へとつながり、日々の業務を精神的なサバイバルに変えてしまっているのです。
さらに、「医学部に行きたかったがなれなかった」というコンプレックスを抱えている場合、親からの失望を敏感に感じ取り、「自分は失敗作だ」という強烈な劣等感を抱えていることもあります。これが医師への過剰なコンプレックスや、逆に卑屈な態度として現れ、チーム医療の中でのコミュニケーション不全を引き起こす原因になることも少なくありません。
職場が「機能不全家族」化するメカニズムと再現性
ACの最大の特徴の一つに、「無意識に慣れ親しんだ家庭環境を、職場で再現してしまう」という傾向があります。薬局という職場は、管理薬剤師(親役)とスタッフ(兄弟役)という閉鎖的な小集団であり、機能不全家族の構造と非常に似通っています。そのため、AC傾向のある薬剤師は、新しい職場に入っても、かつて家庭で演じていた役割を無意識に引き受けてしまうのです。
具体的には、理不尽な要求をする薬局長(支配的な親)に対して、一切の反論ができずに従い続けてしまったり、問題のある同僚(手のかかる兄弟)の尻拭いを黙って引き受けてしまったりします。これは「そうしないと居場所がなくなる」という幼少期の恐怖がフラッシュバックしているためであり、論理的に「断ればいい」と分かっていても、身体がすくんでできないのです。
また、ACは他人の感情の機微に異常に敏感であるため、薬局内の空気が少しでも悪くなると、「自分のせいではないか」と不安になり、過剰に気を使い始めます。休憩室で誰も喋らないだけで息苦しさを感じたり、上司がため息をついただけでビクッとしたりする。このように、常に他者の顔色を伺うことにエネルギーを浪費してしまうため、業務が終わる頃にはぐったりと疲弊し、帰宅後は何も手につかない状態になりがちです。
薬剤師業務特有のトリガー(調剤過誤恐怖・疑義照会・患者対応)
薬剤師の業務そのものも、ACのトラウマを刺激する「トリガー」に満ちています。特に深刻なのが「調剤過誤への恐怖」です。AC特有の完璧主義と不安傾向は、「1つのミスも許されない」という医療現場の緊張感と最悪の相性を示します。普通の人が「気をつけて確認しよう」と思うところを、AC傾向のある人は「間違っていたら死んでお詫びしなければならない」といった破滅的な思考に陥りやすく、何度確認しても安心できない強迫的な状態になりやすいのです。
また、医師への「疑義照会」も大きなストレス源です。機能不全家族で育った人は、権威者(親・医師)に対して意見を言うことに極度の恐怖を感じます。「怒られるのではないか」「機嫌を損ねるのではないか」という予期不安が強く、必要な照会であっても受話器を持つ手が震えたり、動悸がしたりします。結果、照会をためらってしまったり、過剰にへりくだった態度をとって医師から逆に不信感を持たれたりと、業務に支障をきたすこともあります。
患者対応においても、ACの「境界線(バウンダリー)の弱さ」が問題になります。患者のクレームや理不尽な怒りを、事務的に処理できず、「自分が悪いから怒られているんだ」と個人的に受け止めて深く傷ついてしまいます。また、患者の「辛い」「聞いてほしい」という感情に巻き込まれやすく、共感疲労を起こしてしまうことも。このように、薬剤師業務はACにとって、常に心の古傷を刺激され続ける「地雷原」のような側面があることを理解する必要があります。
業務中の「異常な疲れ」や「手の震え」は、あなたが弱いからではありません。過去の学習体験が、今の環境で誤作動を起こしているだけ。まずは自分の反応パターンを知ることから始めましょう。
あなたはどのタイプ?薬剤師に見られるACの6つの役割と傾向
アダルトチルドレンには、機能不全家族の中で生き延びるために身につけた、いくつかの典型的な「役割」があると言われています。これらの役割は、大人になり薬剤師として働く際にも、職場での立ち振る舞いや悩みの傾向として色濃く反映されます。自分がどのタイプに近いかを知ることは、適職を見つけるための重要な手がかりになります。
| ACタイプ | 家族内での役割 | 薬剤師としての特徴・悩み | 陥りやすいリスク |
|---|---|---|---|
| ヒーロー (英雄) |
期待を背負う優等生。 親の自慢の種。 |
仕事が早く完璧主義。 昇進も早いが他人にも厳しい。 ミスを極端に恐れる。 |
過労死ラインまでの激務。 部下へのパワハラ。 突然の燃え尽き症候群。 |
| スケープゴート (身代わり) |
家族のストレスのはけ口。 問題児扱いされる。 |
職場でなぜか怒られ役になる。 理不尽なクレームを受けやすい。 反抗的と誤解される。 |
職場いじめのターゲット。 度重なる転職。 うつ病、適応障害。 |
| ロストワン (いない子) |
目立たず静かに過ごす。 親の手を煩わせない。 |
調剤室の奥で黙々と作業。 投薬や電話対応が苦手。 存在感がないと言われる。 |
対人業務でのパニック。 評価されにくい。 孤立感の深化。 |
| ケアテイカー (世話役) |
親の愚痴聞き役。 家族のバランス調整。 |
残業を断れない。 同僚の仕事まで抱え込む。 患者の話を切り上げられない。 |
自己犠牲による疲弊。 都合のいい人扱い。 共感疲労。 |
| ピエロ (道化師) |
おどけて場を和ませる。 緊張の緩和役。 |
職場のムードメーカー。 ミスしてもヘラヘラしてしまう。 内心は常にビクビクしている。 |
「反省していない」と誤解。 道化を演じる疲れ。 本音が誰にも言えない。 |
| イネイブラー (支え手) |
親の依存を助長する。 甲斐甲斐しく世話する。 |
ダメな上司や働かない部下を 必死でカバーし続ける。 共依存関係を作る。 |
ブラック企業の延命に加担。 自分がいないと回らないという 歪んだ全能感と疲労。 |
ヒーロー・スケープゴート型:完璧主義とミスの恐怖に追われる日々

ヒーロー(英雄)タイプの薬剤師は、一見すると非常に優秀です。学生時代から成績優秀で、国試もストレート合格、職場でも管理薬剤師やエリアマネージャーに若くして抜擢されることが多いでしょう。しかし、その原動力は「成功への希望」ではなく「失敗への恐怖」です。「期待に応え続けなければ価値がない」と思い込んでいるため、常に気を張り詰めており、休むことができません。1つのインシデントで自己評価が崩壊し、立ち直れなくなる脆さを秘めています。
一方、スケープゴート(身代わり)タイプは、職場のネガティブな感情を一手に引き受けてしまいます。本人が悪いわけではないのに、なぜかいつも貧乏くじを引いてしまう。例えば、たまたま電話に出たら一番厄介なクレーマーだったり、全員の連帯責任なのに自分だけ名指しで怒られたりします。無意識のうちに「怒られる役割」を演じることで、職場の緊張関係を処理しようとする癖がついている可能性があり、パワハラ上司のターゲットにされやすい傾向があります。
この2つのタイプは対照的ですが、「他者の評価に依存している」点では共通しています。ヒーローは称賛を求め、スケープゴートは処罰を引き受けることで、自分の存在を確認しようとしてしまうのです。このループから抜けるには、外部評価ではなく自己評価軸を持つことが不可欠です。
ケアテイカー・イネイブラー型:断れない残業と共依存の罠
ケアテイカー(世話役)やイネイブラー(支え手)タイプの薬剤師は、薬局にとって「使い勝手の良い人材」になりがちです。「私がやります」が口癖で、シフトの穴埋めや面倒な在庫管理、掃除まで進んで行います。しかし、それは善意というよりは、「役に立っていないと不安」という強迫観念に近いものです。自分のキャパシティを超えてもNOと言えず、最終的に心身を壊して休職に追い込まれるケースが後を絶ちません。
さらに深刻なのが「共依存」の問題です。例えば、仕事をしない管理薬剤師の代わりに全ての業務を行ってしまうことで、管理薬剤師の怠慢を助長(イネイブル)させてしまうことがあります。「私がいないとこの店舗は回らない」という感覚は、一時的な自尊心を満たしますが、それは不健全な環境にしがみつく理由にもなってしまいます。患者さんに対しても、本来なら減薬を指導すべき場面で、患者の不安に同調して漫然と投薬を続けてしまうなど、医療従事者としての判断が鈍るリスクもあります。
ロストワン・ピエロ型:存在を消したい衝動と道化の裏にある孤独
ロストワン(いない子)タイプは、とにかく目立たず、空気のように振る舞うことを好みます。調剤室の隅で予製を作っていたり、一人で黙々とピッキングをしたりする時間は落ち着きますが、投薬カウンターに出ることは拷問のように感じます。「自分の発言が他者に影響を与えること」自体に恐怖を感じるため、積極的な提案や服薬指導が求められる「かかりつけ薬剤師」などの業務は大きなストレスとなります。
ピエロ(道化師)タイプは、一見明るく、職場の潤滑油のように見えます。しかし、その笑顔は「攻撃されないための防御壁」です。緊迫した場面や、自分がミスをして怒られている場面でも、無意識にヘラヘラとした態度をとってしまい、「真面目にやっていない」「反省していない」と上司の逆鱗に触れてしまうことがあります。内心は誰よりも怯えているのに、そのSOSを誰にも気づいてもらえないという深い孤独を抱えています。
「今の職場が辛い」は甘えではない:環境要因とACの相性

ここまで読んで、「自分の性格の問題だから、どこに行っても同じだ」と落ち込んでしまった方もいるかもしれません。しかし、それは違います。ACの生きづらさは、「環境との相互作用」で決まります。つまり、あなたの特性を「弱点」として刺激する環境もあれば、逆に「強み」として活かせる環境もあるのです。
今の辛さは、あなたの忍耐力が足りないからではありません。ACという特性にとって、現在の薬剤師業界のトレンドや職場環境が、構造的にミスマッチを起こしている可能性が高いのです。
対人業務の負担増とACにとってのリスク(在宅・かかりつけ)
近年、厚生労働省の方針により、薬剤師の業務は「対物(調剤)」から「対人(在宅・かかりつけ)」へと大きくシフトしています。これは、多くのAC薬剤師にとって過酷な変化です。対人業務、特に在宅医療では、患者さんのプライベートな空間に入り込み、患者さんやその家族の複雑な感情、時には家庭内のトラブルに直面することになります。
他者の感情の境界線が曖昧なAC薬剤師にとって、これは「被曝」にも等しいストレスです。患者さんの苦しみを自分のことのように感じてしまったり、家族間の不和を見て自分のトラウマがフラッシュバックしたりするリスクがあります。国の施策としては正しい方向性であっても、個人の適性として「対人業務が辛い」と感じることは、決して恥ずかしいことではありません。無理に適応しようとして心を壊す前に、自分の守備範囲を見極める必要があります。
小規模薬局の「濃すぎる人間関係」がメンタルを蝕む理由

AC薬剤師にとって、実は最も危険な環境の一つが「小規模な個人経営薬局」です。スタッフが数名しかおらず、社長や管理薬剤師の権力が絶対的な環境は、まさに「密室の機能不全家族」そのものになりやすいからです。
大規模チェーンや病院であれば、人事部やコンプライアンス窓口があったり、異動によって人間関係をリセットできたりします。しかし、個人薬局には逃げ場がありません。特定の権力者の顔色を伺い続ける日々は、幼少期の恐怖を延々と再生産させます。また、人間関係が固定化されるため、一度「スケープゴート」や「イネイブラー」の役割が定着すると、そこから抜け出すことが極めて困難になります。「アットホームな職場」という求人文句は、ACにとっては「プライバシーがなく、感情的に巻き込まれやすい職場」と同義である可能性が高いので注意が必要です。
逃げではなく「環境療法」としての転職を考えるべきサイン
心身に以下のようなサインが出ている場合、それは「頑張る時」ではなく「逃げる時」です。これを、単なる転職ではなく、自分を回復させるための「環境療法」と捉えてください。
環境を変えるべき危険サイン(チェックリスト)
- 出勤前の吐き気、動悸、腹痛が常態化している(身体化)
- 薬局の電話が鳴るとビクッとして心拍数が上がる
- 帰宅後も、その日の調剤や投薬の内容を延々と反芻して不安になる
- 休日は泥のように眠るだけで、趣味や外出をする気力が湧かない
- 「消えてしまいたい」「事故に遭えば仕事に行かなくて済む」と考える
これらの症状は、脳が「ここは危険だ」とアラートを出している証拠です。ACの人は我慢強いことが裏目に出て、適応障害やうつ病の診断書が出るまで耐えてしまいがちです。しかし、心が折れてしまってからでは、回復にも再就職にも時間がかかります。余力が残っているうちに、「安全な場所」へ避難することは、医療従事者として自分自身の命を守るための適切なトリアージなのです。
「ここで逃げたら負け犬だ」という声が頭の中で聞こえるかもしれません。でもそれは、あなた自身の声ではなく、過去にあなたを縛った「誰か」の声です。その声を無視して、自分の心を守る選択をしましょう。
タイプ別「適職処方箋」:ACの強みを活かし弱点をカバーする働き方
ACの特性は、裏を返せば強力な武器にもなります。例えば「敏感さ」は「リスク察知能力」に、「顔色を伺う癖」は「空気を読む力」に転換できます。重要なのは、その能力がポジティブに評価され、かつ精神的負担が少ない環境を選ぶことです。ここでは、タイプ別におすすめの働き方や職場環境を提案します。
| ACタイプ | おすすめの働き方・職場 | 選ぶべき環境・条件 | 避けるべき環境 |
|---|---|---|---|
| ヒーロー (完璧主義) |
大手企業の管理部門 DI・学術業務 品質管理(QC) |
成果が数値で明確に出る。 マニュアルやルールが厳格。 自分のペースで没頭できる。 |
曖昧な指示が多い職場。 ルール無用の個人薬局。 達成感のないルーチンのみの業務。 |
| スケープゴート (対人トラブル) |
派遣薬剤師 倉庫管理・卸 一人薬剤師店舗 |
人間関係がドライ・期間限定。 対人接触が物理的に少ない。 自分の城を持てる環境。 |
お局様がいる固定的な職場。 チームワーク重視の病院。 感情労働が多い在宅特化店。 |
| ロストワン (対人恐怖) |
調剤専門の大型店 製薬工場の製造 メディカルライター |
分業制で「調剤」に専念可能。 一人で完結する作業。 在宅勤務が可能な職種。 |
かかりつけ・在宅必須の薬局。 電話応対が多いドラッグストア。 声かけ必須の物販。 |
| ケアテイカー イネイブラー (共依存) |
回転率重視のドラッグストア 健診センター 行政(保健所等) |
患者一人にかける時間が短い。 深入りできない仕組みがある。 定時退社が徹底されている。 |
地域密着型の相談薬局。 慢性期病棟(患者と密接)。 残業常態化のブラック職場。 |
対人ストレスを減らす職場選び(一人薬剤師・企業・倉庫管理)
人間関係の摩擦に疲れ果ててしまった「スケープゴート」や「ロストワン」タイプの方には、あえて「一人薬剤師」の店舗や、そもそも患者対応がない「企業・倉庫」という選択肢を推奨します。
一人薬剤師は「責任が重い」「休めない」というデメリットが強調されがちですが、ACにとっては「誰の顔色も伺わなくていい」「自分のペースで仕事ができる」というメリットが勝る場合があります。休憩時間に気を使う必要も、上司の機嫌を気にする必要もありません。また、医薬品卸の管理薬剤師や倉庫でのピッキング管理業務は、対話相手が主に「モノ」や「ドライバー」であり、感情的なもつれが発生しにくい環境です。
ルールとシステムが守ってくれる職場(大手チェーン・派遣・監査システム)
「ミスが怖い」という「ヒーロー」タイプの方には、精神論ではなく「システム」で安全が担保されている職場が向いています。例えば、バーコード監査、重量監査、散剤・水剤監査システムなどの調剤支援システム(例:公立富岡総合病院などが導入しているような高度な機器)がフル装備されている大手チェーンや病院です。機械がダブルチェックしてくれる環境は、AC特有の予期不安を劇的に下げてくれます。
また、人間関係に深入りしたくない場合は、「派遣薬剤師」という働き方も有効です。「契約期間だけの関係」と割り切れるため、過剰な気遣いが不要になります。また、サービス残業や契約外の業務を頼まれても、派遣会社を通じて断ることができるため、「NOと言えない」性格の人にとっては、派遣会社という「盾」を手に入れることになります。
専門性を活かしつつ距離を保つ働き方(DI・学術・メディカルライター)

現場の空気がどうしても合わない場合は、調剤室を出るという選択肢もあります。製薬企業のDI(医薬品情報)担当や学術職は、電話やメールでの対応が主となり、対面のような圧迫感が軽減されます。また、高い文章力や検索能力を持つACの方には、私のようにメディカルライターとしての道もあります。
これらの職種は、「正確性」や「深いリサーチ」が求められるため、ACの持つ完璧主義や徹底したこだわりが「素晴らしい才能」として高く評価されやすい領域です。自分の特性を「生きづらさ」として抱え込むのではなく、「専門スキル」として換金できる場所に身を置くことが、自己肯定感回復への近道です。
親や自分自身の呪縛から解放されるためのキャリア戦略
アダルトチルドレンの薬剤師にとって、転職は単に職場を変えるだけのアクションではありません。それは、親の期待や過去の呪縛から自立し、自分の人生を取り戻すための重要な儀式でもあります。
「親のための就職」から「自分のための就職」へシフトする
多くのAC薬剤師は、新卒での就職先選びにおいて、「親が喜ぶから」という理由で大学病院や有名企業を選んでいる傾向があります。しかし、もし今あなたが苦しんでいるなら、それは「他人の人生」を生きてきた結果の歪みかもしれません。
2回目以降の就職(転職)は、誰のためでもない、「あなた自身が心地よく過ごすため」のものにしてください。年収が下がってもいい、世間体が悪くてもいい。あなたが笑顔でいられるなら、パートタイムでも、全く違う職種でも正解なのです。この「自分で選んだ」という感覚こそが、ACの回復において最も重要な「自己効力感」を育みます。
時には、親に相談せずに転職を決めて、事後報告にする(あるいは報告すらしない)という強硬手段も必要です。成人したあなたの職業選択に、親の許可は本来1ミリも必要ないのですから。
物理的距離を確保する転居と経済的自立のシミュレーション
もしあなたが実家暮らしで、親との関係に悩んでいるなら、転職と同時に「転居」することを強くお勧めします。物理的な距離は、心理的な距離を作るための特効薬です。親の干渉が届かない距離に身を置くことで、初めて「自分自身の感情」を感じ取れるようになる人は多いものです。
薬剤師資格の最大の強みは、「どこでも働ける」ことと「経済的自立のしやすさ」です。地方の僻地求人などでは、住宅手当が手厚かったり、年収が都市部より高かったりするケースも多々あります。これを利用して、親元を離れ、経済的にも精神的にも完全に自立する。そのための資金源として薬剤師免許を使うのです。これは「逃げ」ではなく、立派な「戦略的撤退」です。
転職エージェントを「緩衝材」として活用するメリット
AC傾向のある人は、他者に対して「試し行動」をしてしまったり、逆に言いたいことを飲み込んでしまったりして、面接や条件交渉が苦手な傾向があります。そこで活用してほしいのが、転職エージェントです。
AC薬剤師がエージェントを使うメリット
- 言いにくい希望を代弁してくれる
「人間関係がドライなところがいい」「残業は絶対したくない」といった、直接は言いづらい本音を、エージェント経由で確認してもらえる。 - 客観的な市場価値を教えてくれる
自己評価が極端に低いACに対し、「あなたのスキルならこれだけの価値がある」と客観的な視点をくれることで、自信を取り戻せる。 - 「見捨てられ不安」の軽減
転職活動中、伴走してくれる担当者がいることで、一人ではないという安心感が得られ、孤独な決断の恐怖が和らぐ。
ただし、エージェントにも相性があります。無理に急かすような担当者であれば、すぐに変更を申し出るか、別の会社を使いましょう。ここでも「NOと言う練習」ができると捉えてみてください。
エージェントに「アダルトチルドレンです」と告げる必要はありません。「プレッシャーの少ない環境」「監査システムが整っている職場」など、具体的な希望条件として伝えれば、プロはあなたの特性に合った職場を探してくれますよ。
アダルトチルドレンの薬剤師が自分らしく働くためのQ&A

Q. アダルトチルドレンですが、そもそも薬剤師に向いていないのでしょうか?
A. 決して向いていないわけではありません。AC特有の「敏感さ」や「察する力」は、患者さんの副作用の兆候やコンプライアンス不良に気づく優れた能力になり得ます。問題は「適性」ではなく「環境」です。過度なプレッシャーがかからず、心理的安全性が保たれた職場であれば、その能力をポジティブに発揮できるはずです。
Q. 職場で怒られるのが怖くて、毎日胃が痛いです。
A. それはACの「見捨てられ不安」が強く刺激されている状態です。身体症状が出ている場合、まずは心療内科を受診して症状を緩和しつつ、環境を変えることを検討してください。恐怖で支配される職場は、精神衛生上だけでなく、冷静な判断ができなくなるため医療安全の観点からも危険です。
Q. 転職したいですが、親になんて言えばいいか分かりません。
A. 基本的に、成人したあなたの職業選択に親の許可は不要ですので、事後報告でも構いません。どうしても伝える必要がある場合は、「より専門性を高めるため」「キャリアアップのため」という建前の理由を用意しましょう。本当の理由(辛いから)を話して理解してもらおうと期待すると、逆に傷つく結果になりがちなので注意が必要です。
Q. カウンセリングを受けるべきですか?転職すべきですか?
A. 可能であれば同時並行が理想的です。カウンセリングで自分の思考の癖(認知の歪み)を修正しながら、転職活動で「自分を求めてくれる場所がある」と確認することは、自己肯定感の回復に非常に効果的です。どちらか一方である必要はありません。
Q. 完璧主義で、調剤ミスが怖くて時間がかかりすぎてしまいます。
A. 人力だけの確認には限界があります。最新の調剤監査システム(バーコード管理、重量監査など)が導入されている薬局を選びましょう。自分の目だけでなく、機械によるダブルチェック体制がある環境は、AC薬剤師の精神的負担を劇的に軽減してくれます。
Q. 自分が幸せになることに罪悪感があります。
A. いわゆる「生存者罪悪感」に近いものかもしれません。しかし、あなたが犠牲になり続けても誰も幸せにはなりません。まずは「自分には幸せになる権利がある」と、呪文のように毎日自分に言い聞かせることから始めてみてください。環境を変えて笑顔が増えれば、その罪悪感も徐々に薄れていくはずです。
まとめ

アダルトチルドレンの薬剤師が抱える苦しみは、甘えでも能力不足でもありません。それは、過酷な環境を生き延びるために身につけた鎧が、今の職場環境と擦れて音を立てているサインです。
薬剤師免許は、親を満足させるための道具ではなく、あなたが自由になるための翼です。どうか、その翼を自分自身のために使ってください。あなたに合った職場、あなたが息をしやすい場所は、必ず存在します。
- 薬剤師にACが多い背景には「教育虐待」や「条件付きの愛」がある
- 今の職場での悩みは、家庭環境の「再現」である可能性が高い
- ACの6つの役割タイプを知ることで、自分の行動パターンを客観視できる
- 「調剤過誤恐怖」や「断れない性格」はAC特有のメカニズム
- 対人業務が増加する業界トレンドは、ACにとって負担増のリスクがある
- 小規模薬局の濃密な人間関係は、機能不全家族を再現しやすいので注意
- 辛い時は「逃げ」ではなく、自分を守る「環境療法」として転職を捉える
- ヒーロー型はシステムが整った大手や企業、ロストワン型は一人薬剤師などが適正
- 転職エージェントを緩衝材として使い、言いにくい条件を交渉してもらう
- 親への報告は事後でもOK。自分の人生の決定権を取り戻すことが最重要
- 物理的距離を取る(転居)ことも有効な治療手段の一つ
- あなたは悪くない。自分に合った環境を選ぶ権利がある
